どこまでなら許容範囲？種類別の精度イメージ

まずは、「どの程度のズレなら一般的に許容範囲とされるか」の感覚をつかんでおきましょう。
モデルやコンディションによりますが、ざっくりとした目安は次のとおりです。

もちろんこれは目安であり、急に精度が悪化した／体感で明らかにおかしいと感じる場合は、早めの点検をおすすめします。

機械式時計の遅れ・進みで疑うポイント

機械式時計は、ゼンマイの力と機械部品だけで動いているため、日々の姿勢や温度、着け方によっても精度が変動します。
そのうえで、次のような状況があれば、オーバーホールや調整のタイミングかもしれません。

• ここ数ヶ月で、日差が急に大きくなった
• 遅れ・進みの幅が日によってバラバラになってきた
• 最後のオーバーホールから5年以上経過している

油切れ・摩耗が進むと、テンプの振りが弱くなり、精度が安定しにくくなります。
そのまま使い続けると、パーツのダメージが進行して修理費が高額になるリスクもあります。

クオーツ時計の遅れ・進みで疑うポイント

一般的にクオーツは高精度ですが、それでも
「月単位で見れば多少のズレが出る」のが普通です。
ただし、次のような状態は注意が必要です。

• 数日〜1週間で数分以上ズレる
• 突然大きな遅れ・進みが出るようになった
• 電池交換からそれほど経っていないのに精度が乱れ始めた

この場合、単なる電池残量の問題ではなく、ムーブメント自体の不具合や水入り・錆、
あるいは磁気帯びの可能性も視野に入れる必要があります。

磁気帯び・衝撃・姿勢差の影響

遅れ・進みの原因として見逃せないのが、磁気帯びと衝撃です。
強い磁気を帯びると、機械式はもちろんクオーツでもステップモーターなどの動きに影響が出ます。

• スマホ・タブレット・PCのそばにいつも置いている
• バッグのマグネットやスピーカーの近くに保管していた
• 落下や強い衝撃を受けたあとから症状が出ている

また、機械式の場合は「姿勢差」といって、
置き方（文字盤上／下／リューズ上など）によっても日差が変わることがあります。
同じ条件で数日間計測してみると、傾向が見えやすくなります。

遅れ・進みを放置するとどうなる？

少しのズレなら「まあいいか」で済みますが、明らかな遅れ・進みを放置すると、
次のようなリスクがあります。

• ムーブメント内部の摩耗が進み、パーツ交換が必要になる
• 油切れのまま動かし続けて軸が削れ、修理費が高額化
• 水入りや錆が進行して、ムーブメント交換レベルのダメージに

特に高級時計の場合は、「オーバーホール1回」か「ムーブメント交換1回」かで、
費用差が数万円〜数十万円単位になることもあります。
気づいた段階で一度プロに診てもらう方が、長期的にはお得なことがほとんどです。

自分で判断するためのチェックリスト

次の項目をざっと確認してみてください。

• 機械式か、クオーツか、ソーラーか
• 1日のズレがどのくらいか（数日間、おおよその日差を測る）
• 最後にオーバーホールしたのはいつか
• 最近、磁気・水・衝撃の心当たりがないか
• ズレ方が安定しているか、日によってバラバラか

これらをまとめておくと、修理工房に相談したときに診断がスムーズで、見積もりも正確になりやすくなります。

不安なら「実測した日差」と一緒に相談を

遅れ・進みが気になり始めたら、
まずは数日間、スマホの時刻と合わせて1日あたりのズレ（＝日差）をメモしてみてください。

そのうえで、「種類（機械式／クオーツ）」「購入からの年数」「最後のメンテナンス時期」「磁気・水・衝撃の心当たり」などを書き添えていただければ、
オーバーホールが必要か・調整で済みそうかの目安をお伝えしやすくなります。